【化学基礎】元素の周期律のグラフ問題が”解ける”~図解あり~

元素の周期律って何?

周期表は元々ロシアのメンデレーエフによって、元素を原子量が小さい順に並べたとき性質のよく似た元素が周期的に現れることが発見されたことによって誕生しました。この周期的に現れることを周期律といいます。

つまり、原子番号順に並べた元素には何らかの周期的な関係が見て取れることになります。例えば、電子の数、価電子の数、原子半径や第1イオン化エネルギーは周期律を示す代表格です。

このような関係を視覚的に捉える方法として、グラフで表されることが多々あります。そのようなグラフ問題の解き方について、演習問題を通して解説していきます!

本記事は以下のような人におすすめです!

  • 元素の周期律のグラフ問題が解けない。

それでは、早速始めましょう!

目次

問題:元素の周期律

次のグラフは、原子番号1~20の元素の性質を示す数や量を表したものである。(ア)~(ウ)Ⅱ該当するものを選択軍の中から選び、番号で記せ。(左から(ア)、(イ)、(ウ))

①電子の数、②価電子の数、③原子半径、④第1イオン化エネルギー

2020セミナー化学基礎 | 第一学習社
上の3つの図の拡大版↓

(ア)

(イ)

(ウ)

略解

(ア) ③
(イ) ②
(ウ) ④

テキスト:元素の周期律

イオン化エネルギーと周期律

イオン化エネルギー

まず、イオン化エネルギー(※)とは何かについて説明します。
イオン化エネルギーとは、気体状態の原子から1個の電子を取り去って、1価の陽イオンにするために必要なエネルギーのことをいいます。

右の図を例に考えてみましょう。
\(\mathrm{Na}\)原子のイオン化エネルギーは\(\mathrm{496 \; [kJ/mol]}\)です。
\(\mathrm{Mg}\)原子のイオン化エネルギーは\(\mathrm{738 \; [kJ/mol]}\)です。
よって、この2つを比べると\(\mathrm{Mg}\)原子のほうがイオン化エネルギーが大きいといえます。

(※)
原子から1個の電子を取り去るの要するエネルギーを、厳密には第一イオン化エネルギーと言います。更に、2個目、3個目の電子を取り去るのに要するエネルギーを、それぞれ、第2、第3イオン化エネルギーといいます。

イオン化エネルギーと周期律

では、このイオン化エネルギーを周期表の配列と比較するとどのような特徴が見えてくるのでしょうか?
イオン化エネルギーは、大きく分けて2つの特徴があります。

  • 同周期では、イオン化エネルギーは原子番号とともに増加傾向にある。
  • 次の周期に移ると、イオン化エネルギーは急激に低下する。

この2つの特徴について説明します。

同周期では、イオン化エネルギーは原子番号とともに増加傾向にある。

まず、原子核の陽子(正電荷)はプラスに帯電していて、電子はマイナスに帯電しているため、陽子と電子はプラスとマイナスで引き合っています。
よって、同周期では、
原子番号が大きい→陽子(正電荷)が多い→電子が強く引きつけられる→イオン化エネルギーが大きい
となります。言葉で説明されてもピンとこないと思うので、具体例を見ていきましょう。

例として、同周期の炭素\(\mathrm{C}\)とフッ素\(\mathrm{F}\)を比較してみましょう。
炭素は、原子番号6で+6の力で電子を引き寄せています。
フッ素は、原子番号9で+9の力で電子を引き寄せています。
当然+9のフッ素のほうが電子を強く引き寄せるので、電子を1個取り去るのに必要なエネルギー(イオン化エネルギー)は大きくなります。
よって、原子番号の大きいフッ素のほうがイオン化エネルギーが大きくなるのです。

次の周期に移ると、イオン化エネルギーは急激に低下する。

次の周期に移ると、電子殻が1つ増えることになります。すると、陽子(正電荷)と電子の距離が長くなるため、引き合う力は急激に低下してしまいます。
つまり、
次の周期に移る→陽子(正電荷)と電子の距離が長くなる→電子が引きつけられる力が弱くなる→イオン化エネルギーが小さい
となるのです。これも、具体例を見て理解していきましょう。

炭素\(\mathrm{C}\)は第2周期で、ケイ素\(\mathrm{Si}\)は第3周期です。
図からもわかる通り、明らかに陽子(正電荷)と電子の距離が長くなっています。
この場合、中心の正電荷の大きさに関係なく、距離の影響により陽子が電子を引き寄せる力が弱まり、電子1個を取り去るのに必要なエネルギー(イオン化エネルギー)は小さくなります。

上記の2点を踏まえると、イオン化エネルギーは、
「同周期では原子番号の増加とともに大きくなり、次の周期に移ると急激に低下する。」
ということができます。

それを、横軸原子番号、縦軸イオン化エネルギーのグラフに表すと、以下のようになります。

おおよそ上記の2点が成り立っていることが確認できると思います。

原子半径と周期律

原子半径と周期律

原子半径とは、その名の通り原子の半径のことをいいます。

原子半径は、一般に以下の2点が成立します。

  • 同周期では、原子番号が大きくなるほど原子半径は小さくなる(18族は除く)。
  • 同族 では、原子番号が大きくなるほど原子半径は大きくなる。

この2つの特徴について説明します。

同周期では、原子番号が大きくなるほど原子半径は小さくなる(18族は除く)。

イオン化エネルギーの説明でも述べた通り、原子核の陽子(正電荷)はプラスに帯電していて、電子はマイナスに帯電しているため、陽子と電子はプラスとマイナスで引き合っています。

すると、陽子(正電荷)が多いほうが電子がより中心付近に引き寄せられるため、原子半径は小さくなることが容易に想像できます。
右の図のように、同周期の炭素\(\mathrm{C}\)とフッ素\(\mathrm{F}\)を比較してみても、フッ尾の方が外側の電子が中心付近にギュッと引き寄せられて原子半径が小さくなることがイメージできると思います。

ではなぜ、18族だけは例外なのでしょうか?
それは、電子同士の反発が理由です。

原子番号10番のネオン\(\mathrm{Ne}\)を例に考えてみましょう。
ネオンは、18族の貴ガスで、最外殻電子を8個持っています。
このとき、電子同士の距離が近いので、右の図のように電子同士がそれぞれ反発してしまいます。
その反発による力が正電荷が電子を引き寄せる力よりも大きいため、最外殻電子が広がって結果的に原子半径が大きくなります。

このことから18族の元素は例外といえます。

②同族では、原子番号が大きくなるほど原子半径は大きくなる。

同族で比較すると、原子番号が大きくなるに連れて原子半径が大きくなることは容易に想像できると思います。

炭素\(\mathrm{C}\)とケイ素\(\mathrm{Si}\)はどちらも14族の元素ですが、ケイ素のほうが電子殻が1つ多いので、ぱっと見で原子半径が大きいことがわかります。よって、同族では、原子番号が大きいものほど原子半径が大きくなります。

上記の2点を踏まえると、原子半径は、おおむね
「同周期では、原子番号が大きくなるほど小さくなり、同族では原子番号が大きくなるほど大きくなる。」
といえます。

それを、横軸原子番号、縦軸原子半径としてグラフに表すと、以下のようになります。

おおよそ、上記の2点が成り立っていることが確認できると思います。

価電子の数と周期律

価電子と周期律

価電子とは、一番外側の電子殻にある電子の数のことで結合に重要な働きをします。価電子については、以下の記事で詳しく解説しているのでぜひご覧ください。

では、価電子にはどのような周期律があるのでしょう?
価電子は、以下の2点が成り立ちます。

  • 同周期では、原子番号の増加とともに価電子も増加する。
  • 貴ガスの価電子は常にゼロである。

第2周期の元素を具体例に考えてみましょう。

上の表を見れば一目瞭然だと思います。電子配置で黄色く表しているものが価電子になります。原子番号が上がるにつれて価電子の数も増えていることがわかります。
注意してほしいのは、貴ガスであるネオン\(\mathrm{_{10}Ne}\)の価電子数が0であるという点です。

かんた

価電子とは、他の原子と結合するときなどに重要な役割を果たす電子のことでした。貴ガスは安定で、他の原子と反応しにくいので、価電子はゼロですね!

上の2点を踏まえると、価電子数は、
「同周期では、原子番号の増加とともに増え、貴ガスでは0となる。」
といえます。
それを、横軸原子番号、縦軸価電子数で表すと、以下のようになります。

上記の2点が成り立っていることがわかります。

解説

次のグラフは、原子番号1~20の元素の性質を示す数や量を表したものである。(ア)~(ウ)Ⅱ該当するものを選択軍の中から選び、番号で記せ。(左から(ア)、(イ)、(ウ))

①電子の数、②価電子の数、③原子半径、④第1イオン化エネルギー

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原子番号と周期律の関係については、必ずと言っていいほど「同族」または「同周期」に何らかの関係性が見られます。なので、同族、同周期でどのような特徴があるかを確認することが大切です。

(ア)

同族では、原子番号が増えるに連れて、大きくなっている。
同周期では、原子番号が大きくなるに連れて、小さくなっている。

このような特徴を表すのは、③原子半径です。

A. ③

(イ)

同族では、常に同じ値を示している。
同周期では、原子番号が増えるに連れて、均等に増えている。

このような特徴を表すのは、②価電子の数です。

A. ②

(ウ)

同族では、原子番号が増えるに連れて、おおむね小さくなっている。
同周期では、原子番号が増えるに連れて、おおむね大きくなっている。

このような特等を表すのは、④第1イオン化エネルギーです。

A. ④

まとめ

今回は、元素の周期律のグラフ問題について解説しました。

本記事の重要事項を下記にまとめました。復習に役立ててください!

  • イオン化エネルギーと周期律
  • 原子半径と周期律
  • 価電子の数と周期律

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