有機化合物って何?
有機化合物とは、炭素原子を骨格として組み立てられてる化合物のことをいいます。これに対して、水や塩化ナトリウムなどの有機化合物以外でできたものを無機化合物といいます。
おそらく、突然「有機化合物」と言われてもあんまりイメージができないと思います。そこで、有機化合物の特徴とその分類方法についてまとめました。分類のカギとなる「官能基」や「異性体」についても演習問題を通して解説していきます!
本記事は以下のような人におすすめです。
- 有機化合物とはなにか知りたい。
- 官能基について知りたい。
- 示性式を習得したい。
- 有機化合物の分類問題がよくわからない。
本記事を読んで、有機化合物の第一歩を攻略しましょう!
問題1:有機化合物の特徴
有機化合物に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選べ。
① 構成元素の種類が多いため、化合物の種類も非常に多い。
② 分子式が同じでも、構造や性質の異なるものがある。
③ 一般に、融点や沸点が高く、可燃性のものが多い。
④ 分子からなる物質が多く、水に溶けやすいが、有機溶媒には溶けにくい。
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略解
②
テキスト1:有機化合物の特徴
まず、有機化合物の特徴を知っておく必要があります。有機化合物の特徴は大きく分けて5つあります。その5つを確認しましょう。
有機化合物には次の5つの特徴があります。
- 成分元素の種類は少なく、主に炭素\(\mathrm{C}\)、水素\(\mathrm{H}\)、酸素\(\mathrm{O}\)、窒素\(\mathrm{N}\)の4種類です。その他に、硫黄\(\mathrm{S}\)やリン\(\mathrm{P}\)などを含むこともあります。
- 炭素原子の原子価は4で、炭素原子同士が共有結合により鎖状、環状につながることができるため、化合物の種類は非常に多いです。
- 水よりも、エタノールなどの有機溶媒に溶けやすいです。
- 分子でできているものが多く、無機化合物と比較すると沸点や融点が低いことが多いです。
- 燃焼しやすく、熱で分解しやすいものが多いです。特に、完全燃焼すると水\(\mathrm{H_2O}\)や二酸化炭素\(\mathrm{CO_2}\)を発生します。
次に異性体について解説します。
有機化合物の中には、分子式が同じでも、結合の仕方が異なる事によって異なる性質を示す化合物があります。このような化合物を互いに異性体といいます。
異性体には、炭素骨格の違いだけでなく、官能基の種類の違いや結合位置の違いによって生じる異性体があります。
といわれても、あまりしっくりこないと思うので具体例を確認します。
- 官能基の種類の違い \(\mathrm{C_2H_6O}\)

- 官能基の結合位置の違い \(\mathrm{C_3H_8O}\)

解説1
有機化合物に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選べ。
① 構成元素の種類が多いため、化合物の種類も非常に多い。
② 分子式が同じでも、構造や性質の異なるものがある。
③ 一般に、融点や沸点が高く、可燃性のものが多い。
④ 分子からなる物質が多く、水に溶けやすいが、有機溶媒には溶けにくい。
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それでは、今回の問いを1つずつ見ていきましょう。
① 構成元素の種類が多いため、化合物の種類も非常に多い。
→ 有機化合物の構成元素(成分元素)は少ないです。よって不適切です。
③ 一般に、融点や沸点が高く、可燃性のものが多い。
→ 有機化合物は分子でできているものが多く、融点や沸点は低いので不適切です。
④ 分子からなる物質が多く、水に溶けやすいが、有機溶媒には溶けにくい。
→ 有機化合物はその逆で、水には溶けにくいが、有機溶媒には溶けやすいです。よって不適切です。
よって、消去法より②が適切であることがわかります。「② 分子式が同じでも、構造や性質が異なるものがある。」は、異性体のことを表しているので正解です。
A. ②
問題2:有機化合物の分類
次の化合物について、下の各問いに答えよ。
(ア) CH3CHO (イ) CH3COCH3 (ウ) C2H5COOH (エ) C2H5OH (オ) C6H5NO2 (カ) CH3NH2
(1) 各化合物中に下線を付した官能基について、それぞれの名称を記せ。
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(2) 各化合物は、官能基による分類ではなんと呼ばれるか。その名称を記せ。
(3) これらの化合物の中から、次の(a)、(b)にあてはまるものをそれぞれ選べ。
(a) 酸性を示すもの (b) 塩基性を示すもの
略解
(1) (ア)アルデヒド基 (イ)カルボニル基(ケトン基) (ウ)カルボキシ基 (エ)ヒドロキシ基 (オ)ニトロ基 (カ)アミノ基
(2) (ア)アルデヒド (イ)ケトン (ウ)カルボン酸 (エ)アルコール (オ)ニトロ化合物 (カ)アミン
(3) (a) (ウ) (b) (カ)
テキスト2:有機化合物の分類
まず、有機化合物の分類は、炭化水素による分類と官能基による分類の2種類があります。それぞれについて見ていきましょう。
最も基本的な有機化合物は炭素と水素からなる炭化水素です。炭化水素は、その炭素原子の結合の仕方によって以下の図のように分類することができます。

炭素原子が鎖状に結合しているもの→鎖式(さしき)炭化水素
炭素原子が環状に結合しているもの→環式(かんしき)炭化水素
炭素原子間の結合が全て単結合のもの→飽和炭化水素
炭素原子間の結合が二重結合や三重結合を含むもの→不飽和炭化水素
また、ベンゼン環と呼ばれる炭素骨格を含む環式炭化水素は特有の性質を示す→芳香族炭化水素
このようにして、炭素原子の結合の仕方によって有機化合物は分類することができます。
炭化水素の分子から一部の水素原子を取り除いた原子団を炭化水素基といい、記号Rで表すことが多々あります。しかし、有機化合物の性質は官能基と呼ばれる原子や原子団によって決められています。

例えば左の図のように、エタノール\(\mathrm{C_2H_6O}\)は、\(\mathrm{C}\)と\(\mathrm{H}\)からなる炭化水素基\(\mathrm{C_2H_5-}\)と官能基\(\mathrm{-OH}\)が結びついたものです。
このようにして、有機化合物は炭化水素基と官能基に分けることができ、この官能基の種類によって性質が大きく変わってきます。例を以下に示します。
例えば、
メタノールとエタノールはともにヒドロキシ基\(\mathrm{-OH}\)基をもち、どちらも単体のナトリウムと反応して水素を発生させるという性質があります
酢酸とシュウ酸はともにカルボキシ基\(\mathrm{-COOH}\)基をもち、どちらも水溶液が酸性を示すという共通の性質があります。

このように、官能基が有機化合物に与える影響は大きく、共通の性質を示すことが多いため、有機化合物の分類に官能基が用いられます。
官能基は、有機化合物の性質を知る上でとても重要であることがわかります。そこで、化合物を表記する際に、官能基がわかりやすいように表記すると性質をつかみやすくなります。このような化学式を示性式といいます。
エタノールを例に上げて考えてみましょう。
分子式:\(\mathrm{C_2H_6O}\)
示性式:\(\mathrm{C_2H_5OH}\)
分子式と示性式を見比べてみると、示性式の方はヒドロキシ基\(\mathrm{-OH}\)が一目で確認できます。
このように、有機化合物は構成元素が少なく分子式で違いを表すのが困難であるため、示性式を用いて表記することが多々あります。
では、主な官能基とその化合物の例を以下の表に示します。
官能基の種類 | 化合物の一般名 | 化合物の例 |
---|---|---|
ヒドロキシ基 \(\mathrm{-OH}\) | アルコール フェノール類 | エタノール \(\mathrm{C_2H_5 – OH}\) フェノール \(\mathrm{C_6H_5 – OH}\) |
カルボニル基 \(\mathrm{-CHO}\) \(\mathrm{>C=O}\) \(\mathrm{-CO-}\) | アルデヒド ケトン | アセトアルデヒド \(\mathrm{CH_3 – CHO}\) アセトン \(\mathrm{CH_3-CO-CH_3}\) |
カルボキシ基 \(\mathrm{-COOH}\) | カルボン酸 | 酢酸 \(\mathrm{CH_3 – COOH}\) |
エーテル結合 \(\mathrm{-O-}\) | エーテル | ジエチルエーテル \(\mathrm{C_2H_5-O-C_2H_5}\) |
エステル結合 \(\mathrm{-COO-}\) | エステル | 酢酸エチル \(\mathrm{CH_3-COO-C_2H_5}\) |
アミノ基 \(\mathrm{-NH_2}\) | アミン | アニリン \(\mathrm{C_6H_5- NH_2}\) |
ニトロ基 \(\mathrm{NO_2}\) | ニトロ化合物 | ニトロベンゼン \(\mathrm{C_6H_5-NO_2}\) |
スルホ基 \(\mathrm{-SO_3H}\) | スルホン酸 | ベンゼンスルホン酸 \(\mathrm{C_6H_5-SO_3H}\) |
解説2
次の化合物について、下の各問いに答えよ。
(ア) CH3CHO (イ) CH3COCH3 (ウ) C2H5COOH (エ) C2H5OH (オ) C6H5NO2 (カ) CH3NH2
(1) 各化合物中に下線を付した官能基について、それぞれの名称を記せ。
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(2) 各化合物は、官能基による分類ではなんと呼ばれるか。その名称を記せ。
(3) これらの化合物の中から、次の(a)、(b)にあてはまるものをそれぞれ選べ。
(a) 酸性を示すもの (b) 塩基性を示すもの
(1)
上記の表1を参考に解答します。
(ア) \(\mathrm{-CHO}\) アルデヒド基
(イ) \(\mathrm{-CO-}\) カルボニル基(ケトン基)
(ウ) \(\mathrm{-COOH}\) カルボキシ基
(エ) \(\mathrm{-OH}\) ヒドロキシ基
(オ) \(\mathrm{-NO_2}\) ニトロ基
(カ) \(\mathrm{NH_2}\) アミノ基
となります。
A. (ア)アルデヒド基 (イ)カルボニル基(ケトン基) (ウ)カルボキシ基 (エ)ヒドロキシ基 (オ)ニトロ基 (カ)アミノ基
(2)
上記の表1を参照して解答します。
(ア) アルデヒド、(イ) ケトン、(ウ) カルボン酸、(エ) アルコール、(オ) ニトロ化合物、(カ) アミン
となります。
A. (ア)アルデヒド (イ)ケトン (ウ)カルボン酸 (エ)アルコール (オ)ニトロ化合物 (カ)アミン
(3)
(a) (ウ)はカルボキシ基\(\mathrm{-COOH}\)をもつことから、水溶液は酸性を示します。
(b) (か)はアミノ基\(\mathrm{-NH_2}\)をもち、アミノ基は塩基性を示します。
A. (a) (ウ) (b) (カ)
おわりに
有機化合物の分類について解説してきました。
本記事の重要事項を下記にまとめました。復習に役立ててください!
- 有機化合物の特徴について
- 異性体について
- 炭化水素による分類について
- 官能基による分類について
- 示性式について
- 主な官能基の種類と化合物の例について
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